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前売りのおまけが好きです。
千葉君もこういうのはコレクター魂が疼くと思う。
そしてそんな彼に振り回される苗子ちゃんも可愛いと思う。
最終的には苗子ちゃんに振り回される千葉君が最も可愛いという結論。
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飛び出してきた彼女に驚いて一歩引いたのは数秒前のこと。
今は、高揚した様子の彼女に惹きつけられっぱなしだ。

あのね、千葉君。

あの・・・

その・・・

昔から変わらないおさげがゆるく揺れて、
ここが仕事場だということを一瞬忘れそうになる。

「前売りもらったんだけど・・・」

おずおずと差しだされた紙切れに、
釘づけになった。

そこに書かれた文字は、


―ゴメラ THE MOVIE  運命のパラドックス―




「あ!」

「もう持ってた?」

「あ、ええと・・・」

「何?」

ただ単純に喜べばいいのに、
彼女を目の前にするとスマートな対応が全く取れない。
いまどきの携帯だって、スマートな動きは当たり前だというのに。

怪訝に眉を寄せた顔が少し下から迫ってくる。
だからその顔、駄目だって。

猫っけのある意志の強い眼。
そんな眼で見つめられたら、嘘なんてつけなくなる。

「実は・・・」

そしてやっぱり、見事にばらしてしまう。




「信じられない!10枚も!?」

前もって買っていた個人的な10枚の紙に、
彼女はやっぱり目を見開いた。
それは嫌悪ではなく驚きの表情。
オレのこういう行動に対してそういう反応をする人は少ない。
正直、ほぼ皆無に等しい。

それなのに彼女は、呆れながらも笑ってくれる。

千葉君だから、しょうがないか。

と、その一言をオマケにつけて。


「じゃああげる。1人で12回観てくれば!」

若干怒ってる気がするのは気のせいかな。
『1人で』の部分にやけに棘があった気がして、
このまま逃がしちゃいけない気がして、
2枚の紙きれを突き付けてくる手首を引き寄せた。

小さく悲鳴をあげて竦んだ姿に、
力の加減を間違えたかと不安になって、
それでも止まらない勢いは口を割って出た。

「いや、一緒に行こ!せっかくだし!」

これは・・・デートの誘いなのか?
冷静に考えて、どう考えてもそうとしか思えないことに気づく。

「い、いいの?」

いいのって、いいのって、いいに決まってる。

「2人で6回。三池さんが、嫌じゃなかったら」

「別に・・・嫌じゃない」

どさくさに紛れて誘った6回分のデート。
それさえも彼女は「嫌じゃない」と言った。





羞恥の残る沈黙の中、
彼女の呟きが独り言のように転がった。

「でも何で10枚も・・・」

確かに普通じゃないよなぁ。
自分自身に呆れながら理由を白状する。

「オマケのゴメラが・・・」

全8種類。シークレットあり。
そんなこと言われたら集めずにはいられない。

途中まで言葉にして、ふと目の前に出てきた拳に気づく。

「オマケって、コレ?」


ぱぁっと開いた白い掌。
真ん中にはゴメラが2匹。
目を見張る。



「ああっ!シークレット!!!」



「へ?これなの?」

「凄い!凄いよ三池さん!!初代ゴメラのクリスタルシークレット!!うわぁ!」

廊下中に響く声で叫んでしまったせいか、
心なしか彼女の顔がボッと赤くなった。

「あ、あげる!」

「いいの?」

「私いらないもん!」

こんなに凄いものをあっさりいらないなんて言ってしまう彼女。
価値観の違いというか、嗜好の違いというか。

それなのに、やけに大事そうに差しだされるシークレット。
蛍光灯の光を受けてキラキラ光るクリスタルゴメラ。
彼女が運んでくれる幸せはこんなにもあったかい。
ありがとう、と指先が彼女に触れるのを少し意識しながら受け取った。




「千葉君、デレデレし過ぎだよ。そんなに嬉しいの?」

「嬉しいに決まってるよ、三池さんが誘ってくれるんだから!」

「え・・・?」

「へ・・・?」

「そっちなの?嬉しいの」

「あ・・・ちが・・・」

「違うの!?」


だからその顔、駄目だって。
嘘なんて、つけるはずがない。

そしてやっぱり、見事にばらしてしまう。
「違わないよ」と。



2011/07/10(日) 14:31 小説
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