互いに正体判明後。
けれどもタイミングを逃してただの同僚という。
そういうじれったい期間も良いなと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「三池さん、昨日合コン行ったんだろ」
ギクリと強張る音が聞こえた。
バツが悪そうな顔。
「・・・聞いたの?」
そりゃ、同じ刑事課の人間が交通課と合コンなんて情報は嫌でも回って来る。
自分が誘われなかったのは、
ここ数日事件続きだったから周りが気を使ってくれたんだと思いたい。
けれど、やけに苛立つのはきっと、
彼女の魅力が周囲にも知れ渡ってしまったからだ。
朝から「三池さん可愛いよなぁ」とか、
「気が利くし凄く良い子だったぜ」とか、
彼女を狙うネトネトした言葉を幾つも耳にしたら、
こうなるのも無理はない。
眉間に皺が寄るのが自分でもわかる。
「千葉君も来たら良かったのに」
「誘われてなかったし」
「そっか・・・」
話が止まる。
不穏な空気の中で、
彼女が居心地悪そうにしている。
「なんか・・・怒ってる?」
「怒ってないよ」
「ほら、やっぱり怒ってる」
「怒ってない」
「怒ってる」
ほら、と睨みあげてくる彼女はやっぱり可愛い。
だから、そういう風に可愛すぎるのが駄目なんだよ。
もっとちゃんと自覚してくれないと、オレが困る。
困りすぎてイライラする。
「三池さんって、そんなに彼氏欲しいの?」
つい棘のある嫌味を向けてしまった。
すると彼女は酷く傷付いた顔をした後、
その棘をオレの方に突き返してきた。
「千葉君、最低!デリカシーなさすぎ!!」
ザックリと、心にくる。
掌の傷と同じくらい深くくる。
「私が昨日合コンに行ったのは・・・ッ」
背後に人の通る気配がして彼女はハッと口を閉ざす。
唇の前に添えられた左手がやけに細い。
でも、ギリッと向けられた視線は鋭い。
「そんなの言わせないでよ、バカッ!」
ああ、まただ。
あの日と同じだ。
飛び出した彼女を追おうか追うまいか、
たっぷり20秒悩んで後を追うと、
そう遠くはない廊下に彼女がいた。
刑事課の先輩と。
ほら、だから。
近づくと、どうやら食事に誘われているらしい。
まだ先程の殺気立った状態から抜け出せずにいた彼女は、
突然のことに動転してえーとえーとを連発している。
そんな男慣れしていない様子さえ、
相手の眼には魅力として映っていることに気付いてもいない。
だからもっと、危機感を持てって言ってるんだよ・・・くそッ!
「すみません、彼女今日オレと約束してるんで」
割って入ると、先輩は「まさか、千葉と!?」と本気で驚いた顔。
そらそうだよな、オレなんかと彼女が釣り合うわけがない。
それでも顔見知りの先輩は何となくの雰囲気を察して、
「それならいいや、困らせちゃってごめんね三池さん」
なんて優しい言葉をかけてさらりと去って行った。
残るは、右肩への痛すぎる視線。
「・・・いつ、約束したの」
「今からするの。ゴメン、俺が悪かった」
振りかえって降参する。
これ以上抗ったって、オレに勝ち目は無い。
「・・・もう、怒ってない?」
彼女が抱えていたファイル越し、
不安げに伺ってくる姿。
ああもう、可愛すぎる。
ご飯食べて酒飲んで、
そこから理性を保てる自信は正直ない。
でもせっかくのチャンス、逃せはしない。
「怒ってないから、理由聞かせて?」
君が合コンに参加した理由。
もし、俺に会えると思ったからなんて、
そんな嬉し過ぎる理由だったとしたら、
もう幸せで幸せで堪らなくなるんだけどなぁ、
なんて考えて、まさかそんなはずはないよなと心を宥めて、
さあ答え合わせ、と顔をあげると、
真っピンクに染まった彼女がいた。